アルカント・カルテットのバルトーク

Hmc901963バルトーク 弦楽四重奏曲第5番 第6番
アルカント・カルテット
Harmonia Mundi HMC901963

ハルモニア・ムンディのセールより。

このカルテット,初めて聴くが,あまり話題になったことはないのだろうか。恐ろしいほどのスーパー・カルテットだ。ケラス,ツィンマーマンといった凄いメンバーを見れば,ただ者ではないことは想像できるが,そこから出てくる音はまさに革命的。まるで大オーケストラを聴いているかのような驚異的な安定感とダイナミックレンジの広さ,さらに音色の多彩さ。いわゆるソリスト集団系のカルテットは,個性と個性のぶつかり合いを楽しむことが多いが,ここは室内楽経験の豊富な奏者達だけに,カルテットが一つの楽器のように自在に響く。バルトークのカルテットをここまで豊かな音楽性をもって聴かせてくれる例は多くはないはず。驚異のカルテットの今後にも注目だ。

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マルティヌーの室内楽曲集

Mdg3041439マルティヌー 調理場のレビュー 六重奏曲 4つのマドリガル 九重奏曲
アンサンブル・ヴィラ・ムジカ
MD+G 304-1439-2

管楽器を中心としたマルティヌーの室内楽曲を集めた作品。

調理場のレビュー(1927)と六重奏曲(1929)は,どちらも当時のジャズ・テイストをふんだんに盛り込んだ作品。今聴くと,ひねりの効いた軽音楽といった趣で,とても楽しめる。イギリスのマドリガルに入れ込んでいたマルティヌーは,マドリガルという曲をたくさん作曲しているが,この4つのマドリガル(1937)は,オーボエ,クラリネット,ファゴットのための作品。3声が抽象的に絡み合っていくなんとも不思議な曲。九重奏曲(1959)はマルティヌーの最後の作品。時折顔を出す可愛らしいメロディなんか,うん,新古典主義もいいもんだ,となんか納得してしまう。美しい名曲ですね。

アンサンブル・ヴィラ・ムジカは,ドイツのオケの首席クラスが集まった名技集団。ここでも,ゴリツキ,トゥーネマン,ヴラトコヴィチら,楽器名を省いても通じるビッグ・ネームが参加していて,見事なアンサンブルを堪能できる。

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マルティヌーのヴァイオリン協奏曲

Hmc901951マルティヌー ヴァイオリン協奏曲第2番 弦楽セレナーデ第2番 トッカータと2つのカンツォン
ファウスト(vn) ティベルギアン(p) ビエロフラーヴェク指揮 プラハ・フィルハーモニア
harmonia mundi HMC 901951

マルティヌーは、なんとなくいつも気になる作曲家。これまでもちょこちょこ聴いてきているのであるが、どうも掴みどころがない。でも、何かひっかかるような。今回は、演奏者が期待できそうなので、新譜に手を出してみた。

ヴァイオリン協奏曲第2番は、エルマンに献呈された1943年の作品。メロディといっていいのかよく分からない独特の音の流れと浮遊感が続くマルティヌー・サウンドが堪能できる。ヴァイオリンのファウストも美音を駆使してよく歌いこんでいる。牧歌的で優しい響きのオーケストラも曲とよくあっている。弦楽セレナード第2番は、1932年の作品。モーツァルトのセレナードを思い起こさせる可愛い小品。トッカータと2つのカンツォンは、1946年作曲。ザッヒャーの委嘱を受けて作られたもの。聴いたことがあるなあと思ったら、ホグウッド盤を持っていた。弦楽器を中心としたオーケストラの織りなす響きが美しい作品。ビエロフラーヴェクとプラハ・フィルのコンビは、緩すぎず、きつすぎずの絶妙な響きでマルティヌーの魅力を伝えてくれる(ホグウッド盤を改めて聴き直したがちょっと理屈っぽい。今回の盤のように感性で処理した方が正解かな)。

今回のマルティヌー・アルバムで、また少しマルティヌーに近づけたような気がする。また面白そうなアルバムが出たらチェックしておこう。

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鉄道のリズムに乗って

Hnssler_cd93187ロンビ (1810-1874):コペンハーゲン蒸気鉄道ギャロップ コープランド (1900-1990):ジョン・ヘンリー、鉄道のバラード パッヒャーネグ (1892-1964):出発進行!列車は通り過ぎた イベール (1890-1962):交響組曲〈パリ〉~地下鉄 ダンディ (1851-1931):交響組曲〈海辺の詩〉~緑の水平線、ファルコナーラ エドゥアルト・シュトラウス(1835-1916):ギャロップ〈テープは切られた!〉 ドヴォルジャーク (1841-1904) (ボフスラフ・レオポルト 編曲):ユモレスク作品101-7 ヴィラ=ロボス (1887-1959):バキアナ・ブラジレイラ第2番~カイピラの小さな列車
エドゥアルト・シュトラウス:ポルカシュネル〈蒸気をあげて!〉 レブエルタス (1899-1940):鉄道敷設 ルーセンベリ (1892-1985):抒情劇〈アメリカ旅行〉交響組曲 (1932)~鉄道のフーガ ヨハン・シュトラウス (1825-1899):ポルカシュネル〈観光列車〉 バーンスタイン (1918-1990):ミュージカル〈オン・ザ・タウン〉~地下鉄乗車と空想のコーニー・アイランド オネゲル (1892-1955):パシフィック231(交響的運動第1番)

イジー・スターレク (指揮)  カイザースラウテルン南西ドイツ放送管弦楽団 
Haenssler CD93.187

Haensslerから面白いアルバムが出た。これまでありそうでなかった「鉄道音楽集」である。ヨハン・シュトラウスからバーンスタインまで,時代も様々,地域も様々な多彩な曲が,かなり珍しい曲も含め,収められている。時代が下るにつれ,楽しいところに誘ってくれるはずの機関車が,人間を圧倒する巨大な機械に変貌していくように感じるのは気のせいではないだろう。個人的なお気に入りは,コープランドの作品。古き良きアメリカの蒸気機関車が眼前に現れるような懐かしい響きがたまらない。それから,やっぱりオネゲルの「パシフィック231」の描写は見事というほかない。

演奏は,堅実なもので,様々なスタイルの作品を的確に描き分けている。

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アウストボーのドビュッシー

Simax_psc1297ドビュッシー ピアノ作品集
ボヘミア舞曲 マズルカ 2つのアラベスク 夢想 ロマンティックなワルツ ベルガマスク組曲 バラード 舞曲 夜想曲 ピアノのために

アウストボー(p)
SIMAX PSC1297

ドビュッシー方面は疎い方であるが、このCDは店頭で聞いていっぺんに気に入ってしまい購入。

ドビュッシーの比較的初期の作品をまとめた一枚となっており、最初から最後まで実に気持ちよく聴けるCD。変に雰囲気に流されことのなく、また変にきらびやかに演奏することもなく、テンポ、音色ともしっかりと計算されてコントロールされている、落ち着いた演奏。もちろん、ファンタジックさにも欠けておらず、これは音色の組み合わせ、というか、要するにその瞬間の響き全体に細心の心遣いをしているからだろうか。リズムのセンスの良さも特筆すべき。これからの秋の夜長にはもってこいの演奏だ。

アウストボーは、廉価盤の隠れ名盤の常連ピアニストとして知名度をあげてきたような安っぽいイメージがつきまとうが、こうしてフルプライス盤を買ってみると、やはり現代を代表するピアニストの一人であることが実感できる点でもお勧め。このドビュッシーは、第3集ということで、第1集、第2集も是非聴いてみたいところだ(そのうちブリリアントから「ドビュッシーピアノ作品全集」なんかにならないかと期待していてはだめ←自戒)。

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ブラガ・サントスの交響曲

Marcopolo8223879ブラガ・サントス 交響曲第1番 第5番
Cassuto指揮 ポルトガル響
Marco Polo 8.223879

ポルトガルの作曲家,プラガ・サントス(1924-1988)の交響曲集。某掲示板の「マイナー交響曲」スレで高得点を獲得しており,気になっていたところ,店頭で発見して購入。

ライナーノートがポルトガル語のみなので,詳細はよく分からないが,交響曲第1番は,1946年の作品。急緩急の3楽章形式。ポルトガルといっても,正直イメージがあまり国なのだが,この曲は,ひたすら勇壮でかっこよくて感動的。技法的には時代遅れのロマン派の作風だが,ここまで説得力のある音楽では,誰も文句はないだろう。うって変わって交響曲第5番(1965-66)は,現代的な感覚に満ちあふれた作品。終始,悲劇的な色彩で貫かれており,多彩な打楽器の使用,透明な室内楽的書法が特徴的。どちらの曲も,新鮮さには少し欠ける面があるものの,実力者の作品といった感じで,安心して聴ける。

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オルガンと管弦楽のための作品集~エッシェンバッハ

Ondine_ode10945バーバー 祝祭トッカータ プーランク オルガン,弦楽,ティンパニのための協奏曲 サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付」
ラトリー(org) エッシェンバッハ指揮 フィラデルフィア管
Ondine ODE1094-5

エッシェンバッハとフィラデルフィア管弦楽団の近作は,オルガンとオーケストラのための作品を集めたゴージャスな内容。パリのノートルダムのオルガニストであるラトリーを招いて,フィラデルフィアのホールにある最新の巨大オルガンを使用した一夜のコンサートのライヴ録音。

冒頭のバーバーの祝祭トッカータ(1960)は,当時できたばかりのフィラデルフィアのオルガンとフィラデルフィア管弦楽団のために作曲された,演奏効果抜群のかっこいい作品。プーランクのオルガン協奏曲(1939)は,普段の軽妙洒落なプーランクとは大分違う,宗教的な雰囲気が支配する力の入った作品。急・緩が交互に現れる7楽章形式。静謐な最終楽章で聞こえるチェロ・ソロの哀しげの歌は印象的。サン=サーンスの代表作「オルガン付」は,とかくオルガンの豪華な効果ばかりが強調されるが,むしろ宗教的な内容に注目すべきではないだろうか。主要主題が「怒りの日」の主題の引用であることは有名だし,美しい旋律の第1部後半も,単なるロマンティックなメロディというよりも厳かな祈りの場面と理解するべきなのかもしれない。とは言っても第2部後半はどうしてもお祭り騒ぎになってしまうような気もするし,このあたりがこの作曲家の捉えづらさか。ちなみに,サン=サーンス自身は,「世俗音楽」と「教会音楽」の区別を否定していたらしい。

エッシェンバッハとフィラデルフィアのコンビは,まもなく解消されるようだが,この録音を聴く限り,両者の距離が当初より大分近づいてきていると思われるので,ちょっと残念な気もする。弦楽器の表情は豊かになっているし,「オルガン付」のスケルツォでのエッシェンバッハの追い込みにオケが離れまいと食らいついていくあたりなども,エッシェンバッハがやりたい音楽がかなり実現されてきているように思うのだがどうだろう。3曲ともライヴの熱気も手伝って,とても良い演奏に仕上がっていると思う。

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バルシュコフ、バーバー、ブーニンのヴァイオリン協奏曲~コーガン

Russianrevelation_rv10058
バルスコフ ヴァイオリン協奏曲第2番 バーバー ヴァイオリン協奏曲 ブーニン ヴァイオリン協奏曲
コーガン(vn) ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送響(バルシュコフ) P.コーガン指揮 ウクライナ響(バーバー) ラザレフ指揮 ソヴィエト国立響(ブーニン)
Revelation RV10058

コーガンの比較的珍しいヴァイオリン協奏曲を集めた1枚。

バルスコフ(1912~)は、soviet composersにも情報がないマイナー作曲家。作風は、後期スクリャービンと初期プロコフィエフがごっちゃになった分裂的な感じ。いまひとつこれといった魅力に欠けるか。バーバーの協奏曲は、かなりメジャーな曲であるものの、ロシア勢による録音はこれだけだろう。息子コーガンの操るオケもなかなか健闘しており、第2楽章のロマンティックな響きもなかなか。ブーニン(1924~1976)は、ショスタコーヴィチの弟子で、個人的にはヴァインベルクの交響曲第4番の被献呈者として名前を知った人。まとまった情報としては、soviet composersの頁バルシャイのHPに。ヴァイオリン協奏曲は1972年の作品というから、短い生涯の中では晩年の作品。ロシア正統派というべきか、胸をかきむしられるような痛切なメロディが根底にある作品で、個人的には大好きなタイプの作曲家だ。ただし、録音は少ないようで、現役盤として音が聴けるものはない様子。地道に探していくほかないようだ。


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ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密

Sony_sicc516ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密
フォーグラー(vc) ロバートソン指揮 ニューヨーク・フィル
キルヒシュラーガー(ms) ドイチュ(p)
Sony SICC-516

ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密と題されたこのアルバム、ドヴォルザークの最高傑作の一つにも数えられるこの名作の謎めいた部分に迫る好企画だ。

はじめに、この協奏曲の鍵となる作品である、ドヴォルザークの「4つの歌」より第1曲「ひとりにさせて」が歌われ、チェロ協奏曲の演奏につながれる。解説によると、推測も含まれるとしながらも、次のような事実を指摘している。
①ドヴォルザークは、妻と結婚する前、義姉のヨゼフィーナと恋に落ちたこと
②「ひとりにさせて」はヨゼフィーナのお気に入りの曲であったこと
③ヨゼフィーナが病気になったことを伝える手紙を受け取った直後、ドヴォルザークは第2楽章中間部に「ひとりにさせて」を引用したこと
④ヨゼフィーナの死の後、再び「ひとりにさせて」を引用した第3楽章コーダを付け加えたこと
他にも、いくつか「ひとりにさせて」と「協奏曲」の関連についての示唆がある。第3楽章のコーダの手前で、歌曲の原調であるホ長調に転調していく部分についてのフォーグラー自身の指摘も面白い。
もっとも、解説でも結論めいたことは避けており、その意味ではまだ謎は残されたままだが、協奏曲の後にフォーグラーが演奏する「ひとりにさせて」(vc版)を聴くと、この作品に一歩近づけたような気がする。

解説では、ヨゼフィーヌだけでなく、アメリカの黒人霊歌やフォスターの影響(第1楽章第2主題)も指摘され、このCDには続けて、フォスターの歌曲金髪のジェニーもう行ってしまうの?愛しい人が歌われる。そして第3楽章に聴かれるジプシー的な要素との関連で、ドヴォルザーク自身の歌曲ジプシーの歌が、歌とvc編曲版とが交互に奏でられる。それぞれの要素の持つ意味、それぞれの関連性も含め、なかなか詳細な解説(音楽学者とフォーグラーの相互インタビュー形式をとっている)があり、これらを読みながら聴くと、協奏曲がより生き生きしたものとして聴こえてくる。

フォーグラーのチェロは、やや色気に乏しいが、真面目でしっかりしている。ロバートソンとオケは、堅実でありながら内容のある中身の濃い伴奏。録音バランスが少しソロに傾きすぎなような気もするが、こうした企画だけあって演奏者も気合いが入っているのだろう、安定感のある好演。キルヒシュラーガーの歌もドイチュのピアノも素敵だ。

私は、以前どこかで書いたかもしれないが、この曲の少し不自然なところに抵抗があったのだが、その部分に作曲者が万感の思いを込めていたことを知り、かなり聴き方が変わりそう。この手の企画、是非これからも続けて欲しいものだ。

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オネゲルの交響曲全集~ボド

Supraphon_1115662オネゲル 交響曲第1番~第5番 交響的運動第1番「パシフィック231」 交響的運動第3番 テンペストのための前奏曲
ボド指揮 チェコ・フィル

先日聴いたオネゲルの室内楽曲集に感銘を受けて、この作曲家の代表作である交響曲をちゃんと聴いてみようとと思い、中古屋で購入。スプラフォン盤で、最近入手容易なクレスト盤より安いと思って買ったが、100円ほど高かった。それから、余白に収められた曲もクレスト盤とは少し違う。

オネゲルの絶対音楽は、凄くよく書けているのだろうけど、いまひとつメッセージ性が希薄で、それがメジャーになりきらない原因のように思う。交響曲第1番など、どの部分をとっても文句の無い出来(特に第2楽章の深々とした哀しみ)なのだけども、曲全体としてみた時、今ひとつ隔靴掻痒の感が否めない。有名な第3番は、この点、全編悲劇的なトーンで統一されており、また第2番は、とってつけたようになりがちな終楽章の聖歌への導入が奇跡的にうまくいった例であり、これらが比較的人気があるのもよく分かるし、久しぶりに聴いたが、やはり素晴らしい曲だと思う。第4番は、ややアイディア倒れの感(夏の牧歌くらいの長さで良かった?)。第5番は、見事なのだが、内面的で暗いので、何度も聴くような曲でもないか。…といったところが、交響曲を通しで聴いてみた感想。10年くらい前にデュトワ盤だったか、通しで聴いたときは、全く理解できず、すぐに手放してしまったが、今回は、かなりオネゲルの理解に近づいたような気がする。個人的には、よりマイナーな室内楽の方によりオネゲルの美質を感じるがどうだろう。

演奏は、定評あるもの。骨太の響きが、オネゲルのリズミックな音楽を力強く再現している名演奏。オネゲルの全集に関しては、いくつかの新録音も出ているようだが、手に入れて比較してみるのも面白そう。


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