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ピアノ協奏曲(1971)

1 曲目について

60年代に新たな響きを作り出していったボリス・チャイコフスキーであるが,70年代のこの作品のあたりから,ロマン回帰,あるいはロマンとの融合のような方向を見せ始める。この作品の第2楽章で聴かれるような明確な歌謡主題は,60年代の作品では影を潜めていたし,第5楽章も技法的には60年代の作品と変わらないが,表現されているものは,かなり感情に直接的に訴えるものに変わってきていると思うのだが,どうだろうか。オーケストラは,弦楽合奏と2本のホルン,打楽器という変則的な編成。独奏ピアノはほぼ休みなく動き回るが,打楽器的な音型を要求される場面が多く,ヴィルトゥオーゾ的な面は薄い。

全5楽章からなる組曲風の構成。
第1楽章は,衝撃的な同音反復からなる強烈な印象を残すトッカータ風のアレグロ楽章。冒頭からひたすら同じ音をたたき続けるハイテンションなピアノ。徐々に周囲が絡んできて,後半ホルンが加わるあたりからは手がつけられないほど熱い展開。幕切れも実に鮮やか。最後までついて来られる人は最高のカタルシスを得られるはず。
第2楽章は,うって変わって静かな歌心溢れる抒情的な楽章。この楽章で聴かれるような明確で平易な抒情性は,60年代の作品では封印されていたが,ここで堂々の復活。コントラバスの伴奏に乗って流れるように弾かれる優しい主題がA主題。ピアノの低音で提示され,ホルンが高らかに歌い上げる力強い主題がB主題。ABABの単純な構成だが,後半のABはピアノの主題に弦楽器のソロの対話によるもので,その美しさは感涙もの。B主題がピアノの最高音域に消えていく瞬間はたまりません。
第3楽章は,ボーリング球が弾むような感じの,比較的遅いテンポながら力強い曲。はじめにピアノで示される力強いA主題と続いて弦楽器によって示される単純な音型のB主題とが交錯する。
第4楽章は,急速な楽章。冒頭ホルンで示される付点に特徴のあるリズムA主題とピアノで示される流れるような主題Bとが交互に現れる(B主題の伴奏の音型がカッコイイ)が,後半は静まり,第5楽章へのつなぎの役割を果たす。
第5楽章は,全てが消え行くような音楽。冒頭でピアノで示された動機が,次々に形を変えながら,徐々に静まって行く。時々添えられる弦楽器の何気ない伴奏が実に美しくて感動的。

2 録音情報

録音は,作曲者/フェドセーエフ盤(Relief)とソロヴィエヴァ/ミンバエフ盤(Naxos)がある。オーケストラの編成が作曲者盤の方が大きく,受ける印象はだいぶ違う。勢いのある作曲者盤に対して丁寧なソロヴィエヴァ盤。個人的にはホルンが圧倒的な表現力を聴かせる作曲者盤をお勧め。

3 データ

初演:1971年9月21日モスクワ 作曲者(p) バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団

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