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ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密

Sony_sicc516ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密
フォーグラー(vc) ロバートソン指揮 ニューヨーク・フィル
キルヒシュラーガー(ms) ドイチュ(p)
Sony SICC-516

ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の秘密と題されたこのアルバム、ドヴォルザークの最高傑作の一つにも数えられるこの名作の謎めいた部分に迫る好企画だ。

はじめに、この協奏曲の鍵となる作品である、ドヴォルザークの「4つの歌」より第1曲「ひとりにさせて」が歌われ、チェロ協奏曲の演奏につながれる。解説によると、推測も含まれるとしながらも、次のような事実を指摘している。
①ドヴォルザークは、妻と結婚する前、義姉のヨゼフィーナと恋に落ちたこと
②「ひとりにさせて」はヨゼフィーナのお気に入りの曲であったこと
③ヨゼフィーナが病気になったことを伝える手紙を受け取った直後、ドヴォルザークは第2楽章中間部に「ひとりにさせて」を引用したこと
④ヨゼフィーナの死の後、再び「ひとりにさせて」を引用した第3楽章コーダを付け加えたこと
他にも、いくつか「ひとりにさせて」と「協奏曲」の関連についての示唆がある。第3楽章のコーダの手前で、歌曲の原調であるホ長調に転調していく部分についてのフォーグラー自身の指摘も面白い。
もっとも、解説でも結論めいたことは避けており、その意味ではまだ謎は残されたままだが、協奏曲の後にフォーグラーが演奏する「ひとりにさせて」(vc版)を聴くと、この作品に一歩近づけたような気がする。

解説では、ヨゼフィーヌだけでなく、アメリカの黒人霊歌やフォスターの影響(第1楽章第2主題)も指摘され、このCDには続けて、フォスターの歌曲金髪のジェニーもう行ってしまうの?愛しい人が歌われる。そして第3楽章に聴かれるジプシー的な要素との関連で、ドヴォルザーク自身の歌曲ジプシーの歌が、歌とvc編曲版とが交互に奏でられる。それぞれの要素の持つ意味、それぞれの関連性も含め、なかなか詳細な解説(音楽学者とフォーグラーの相互インタビュー形式をとっている)があり、これらを読みながら聴くと、協奏曲がより生き生きしたものとして聴こえてくる。

フォーグラーのチェロは、やや色気に乏しいが、真面目でしっかりしている。ロバートソンとオケは、堅実でありながら内容のある中身の濃い伴奏。録音バランスが少しソロに傾きすぎなような気もするが、こうした企画だけあって演奏者も気合いが入っているのだろう、安定感のある好演。キルヒシュラーガーの歌もドイチュのピアノも素敵だ。

私は、以前どこかで書いたかもしれないが、この曲の少し不自然なところに抵抗があったのだが、その部分に作曲者が万感の思いを込めていたことを知り、かなり聴き方が変わりそう。この手の企画、是非これからも続けて欲しいものだ。

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