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ムラヴィンスキーのリハーサル

img6ブラームス 交響曲第4番 ベートーヴェン 交響曲第4番 ブルックナー 交響曲第9番
ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィル

「ムラヴィンスキー・リハーサル&コンサート」と題された8枚組みのCDである。内訳は、ブラームスのリハーサル2枚、ベートーヴェンのリハーサル3枚、ブラームスのセッション録音1枚、ブラームスとベートーヴェンのライヴを納めたものが1枚、ブルックナーのライヴを納めたものが1枚である。ベートーヴェンは、1973年の日本公演の前のレニングラードでの録音、ブルックナーは1980年のレニングラードでの録音である。それぞれのライヴ録音は、既に何度も発売され、ムラヴィンスキーの代表的録音として有名なものばかりであり、今回の目玉はリハーサル。ということで、完全なマニア向けCD。ムラヴィンスキーのリハーサルは、映像などでも部分的に出ていたが、ここまで長く収録されているのはおそらく初めてだろう。

リハーサルの内容は「合っていないところをひたすら合わせる」という至極真っ当なもの。私自身、大学オケの経験があるが、基本的にやっていることは変わらない。ただ、大学オケであれば、プロの指揮者対アマチュアの学生という歴然たる上下関係があるのは当然であるが、それと同じ関係がレニングラード・フィルという、当時世界最高峰の演奏者達の集まりの中でも当然のように築かれているところが凄い。

ムラヴィンスキーが特に気を遣っているのが、まず、テンポとリズム。ベートーヴェンの第2楽章の冒頭の第2ヴァイオリンのリズムを徹底的に合わせていく場面は、このリハーサルでも最高の場面(オケのメンバーはたまったものではないだろうが)。列ごとに順番に弾かせていくのだが、緊張のあまり弱々しい音しか出せなくなる奏者に向かって「どうしたんです?私はあなたを射殺したりはしませんよ」などと言ってさらに追い込んでいって、やがてぶち切れてしまう。もう一つが、楽器間のバランス。少しでも伴奏がざわつくと「うるさい」と必ずくぎをさす。

こうした地道な作業を6日も続けて曲を仕上げていき、あの演奏になるのである。ちょっと現代では考えがたいリハーサルの在り方なのかもしれない。

演奏は、いずれも語り尽くされている名演奏。ムラヴィンスキーの独特の感覚がそれぞれの曲のイメージを全く新しく塗り替えてしまっている。そこにあるのは新奇さではなく、ムラヴィンスキーの確信。その圧倒的な説得力にはひれ伏すしかない。音質も非常に良い。この演奏家に興味のある人なら、少し高いが買う価値が十分にある。

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