モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」

モーツァルト 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」

いわゆるダ・ポンテ三部作の最終作。私の周囲でも,モーツァルトのオペラと言えば「コシ」という意見が多く,極めればここにたどり着くらしい。早速聴いてみたが,何と言っても重唱の美しさに彩られたこの上なく上品な音楽。ドン・ジョヴァンニが少し狙い気味なのとは対照的。話の筋は,スワッピング・ゲームという必ずしも大人しいものではないのだが,登場人物は何故か基本的に穏やかな人たちばかりで,ドラマチックな場面は少ない大人のオペラ。それと元ホルン吹きとしてどうしても気になるのは,後半,フィオリディリージのアリア(ロンド)のところでホルンに要求される超絶技巧。協奏曲よりもはるかに難しいパッセージが何度も出てくるが,一体誰が吹くことを想定していたのだろうか。

Photo_7映像で観たのは,「魅惑のオペラ」シリーズのムーティが指揮するスカラ座の舞台。音楽の美しさをそのまま映像化したような雰囲気。ムーティの音楽も過不足なく楽しめる。                                                                                                                                                                                      
Photo_4CDで聴いたのは,まずはド・ビリー盤。若さ溢れる元気いっぱいの演奏。このオペラの上品さは,若干後退しているが,これはこれで一貫していてよい。                                                                                                                                                                                                                                                                  Photo_5それから,クイケン盤。古楽器演奏だが,比較的遅めのテンポの中,じっくりと落ち着いて聴かせてくれる演奏。歌手陣も充実しており,アンサンブルのバランスもとてもよい。                                                                                                                                                                        

Photo_6実は,圧倒的な感銘を受けたのは,マッケラスのChandos盤。オペラ・イン・イングリッシュ・シリーズの中の最新録音(2007年)で,当然,英語歌唱なので,おそらく一般的には英語圏以外では見向きもされないのかもしれないが,NMLにあったので聴きかじったところ,その豊かな音楽に一発でやられてしまった。これも古楽器使用だが,透明感の高い鮮烈な響きと活き活きしたリズム。オーケストラと歌唱陣の響きの絡みが絶妙。完璧です。

| | Comments (61) | TrackBack (0)

シュタイアーのモーツァルト

Photo_3モーツァルト 転調するプレリュードKV 284a ピアノ連弾ソナタKV.358 転調するプレリュードKV deest カデンツァ KV.624(626a) パイジェッロの歌劇『哲学者気取り』の『主に幸いあれ』による6つの変奏曲KV.398 前奏曲とフーガ ハ長調 KV.394 (383a) ショルンスハイムとシュタイアーによる即興演奏 ピアノ連弾ソナタKV.381 6つのドイツ舞曲KV.509(ピアノ連弾編曲版)
シュタイアー,ショルンスハイム(fp)
Harmonia mundi HMC901941

ハープシコードとフォルテピアノを組み合わせたという何とも不思議な楽器を使ったモーツァルトの4手作品集。解説に写真が入っているが,ピアノが向かい合っている奇妙な設計。2人で向かい合って連弾ができるという趣向なのだろう。モーツァルトもこの楽器に興味を示していたというから,全くのトンデモというわけではない。

肝心の楽器の音色だが,基本的にはハープシコードが音量的に優位で,音楽的も主導権を握っているよう。そこにフォルテピアノの柔らかい音色が時々前面に出て味付けを行っている感じ。映像があればもっと面白いと思うのだが,耳で違いを追っていくのも少し疲れるが面白い。

収録曲の中では,プレリュードがいくつか入っているが、これはモーツァルトの即興演奏を書き留めたものということだ。当時の即興演奏の雰囲気が分かるのが興味深い。他は,いずれも軽く短めの作品が集めてあって,モーツァルトの肩の力の抜けた音楽が楽しめる。

| | Comments (72) | TrackBack (0)

モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」

モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

フィガロに続いて観たのは,「ドン・ジョヴァンニ」。フィガロに比べて,登場人物のキャラが立っていて分かりやすいし,各場面も劇的な部分が多く,起伏に富んでいる。その分,繊細さ,細やかさでは,フィガロに一歩譲るような気もするが,それでもきちんと音楽を聴いていくと,やはり考え尽くされている(としか思えない)天才的な流れ。

登場人物で興味深いのは,オッターヴィオ。真面目に歌えば歌うほど,どんどん滑稽に見えてくる。はじめにアンナと復讐を誓っておきながら,成り行きにまかせようとか,当局に訴えようとか,自分では何にもせずに,最後はドン・ジョヴァンニの死を自分の手柄のように高らかに歌い上げるや,ドン・アンナからは振られてしまう(結婚を1年待つなんてことになっているが,1年後に結婚するとは私には考えがたい)。

PhotoDVDで観たのは,レヴァインが指揮するメトの舞台。メトの舞台はとかくオペラファンからは馬鹿にされているような印象があるが,その意味がよく分かったような気がする。健康的なレヴァインの音楽,ひねりのない豪華な舞台装置,初めてオペラに接する立場からすると,とても楽しめるのだが,要するに問題意識,創造性をほとんど感じさせないということだろう。でも,これはこれでいいもの。このDVDは,歌手が粒ぞろいでレベルが高いし,歌手達も束縛がないためか,思う存分に楽しそうに演技をしていて,観ていても気持ちいい。

Photo_2CDで聴いているのは,激安ボックスのド・ビリー盤。エッジの効いたクリアで元気のある音楽で,レヴァインののどかな音楽作りとは一線を画す。歌手陣にも不満がない。でも,この音楽とメトの舞台はおそらく似合わないんだろうな。映像のないCDのオペラの聴き方も楽しい悩みどころ。

| | Comments (340) | TrackBack (0)

アレア・アンサンブルのモーツァルト

Mvcremona_mvc002008モーツァルト ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのためのディヴェルティメント 変ホ長調 K.563
アレア・アンサンブル(アンドレア・ロニョーニ(Vn),ステファノ・マルコッキ(Va),マルコ・フレッツァート(Vc))
MV Cremona MVC002-008

アリアCDさんでお勧めされていたイタリア・クレモナの小レーベルMV Cremona。クレモナの楽器工房が仲間の音楽家を集めてCDを製作しているらしい。その中にモーツァルトのK.563があったので,注文。

古楽器による演奏で,楽器の音色がつややかで伸びやかで気持ちいい。残響をうまく取り入れた録音も秀逸で,いかにも弦楽器の音色を愛する人たちが作ったアルバムといった感じが楽しい。演奏も技術的にキレキレというわけではないが安定して豊かな歌を聴かせてくれる。この精緻な作品を真面目に聴かせようとするあまり,ディベルティメントという作品に与えられた名称を忘れてしまうような演奏も多いような気がするが,ここでは気の知れた仲間が集まって晩年のモーツァルトの世界を素直に楽しんでいるような風情がとてもよい。

| | Comments (76) | TrackBack (0)

ハイドンの協奏曲(シュタイアー)

Hmx2961854ハイドン クラヴィーア協奏曲ト長調 Hob.XVIII-4 クラヴィーアとヴァイオリンのための協奏曲ヘ長調 Hob.XVIII-6 クラヴィーア協奏曲ニ長調 Hob.XVIII-11
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ) ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指揮) フライブルク・バロック・オーケストラ
Harmonia Mundi HMX2961854

今年は,ハイドンの没後200年にあたるらしい。鰤やら何やらの出現で,膨大な作品群がきわめて容易に安価で耳に出来るようになったのはここ最近の大きな変化。ハイドン観も大きく変わってくるような気がする。

ハルモニア・ムンディがカタログの中からいくつかのハイドン・アルバムをバジェット・プライスで出してきてくれて,これはその中の1枚。シュタイアーのフォルテピアノ(1785年製作のピアノのレプリカ)が売りだが,これはとてもいい。音色と響きがとてもきれい。軽やかなんだけども,音色が単純でないというか,奥深くて繊細。緩徐楽章での表情豊かな歌はいつまでも聴いていたいと思わせるような魅力に満ちている。急速楽章でのユーモアたっぷりの力強いアクセントも楽しい。素直にハイドンっていいなあ,という幸せな1枚。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

ブリュッヘンの第九

Phcp10509ベートーヴェン 交響曲第9番 コリオラン序曲
ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ
Philips PHCP-10509

少し前に中古屋さんで手に入れたCDだが,感銘を受けたもの。

この第九という曲,昔から完璧なソナタ形式の第1楽章は文句無しに素晴らしいのだが,あとは曲が進むにつれて質が下がり,第2楽章は長いし,第3楽章は中途半端(後期ピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲の出来そこない)だし,第4楽章の非音楽的な絶叫に至っては意味不明。ということであまり好きでなかったのだが,ブリュッヘンの全集の1枚が安く転がっていたので,購入したもの。

これが,私の滅茶苦茶な第九感を覆すに十分な演奏でびっくり。第1楽章の立体的で透明な響きは,これまで聴いた演奏の中でもトップクラス。第2楽章もきびきびしたテンポで聴かせるし,第3楽章の美しさもなかなか。一番びっくりしたのは第4楽章の合唱。ちゃんときれいに音楽的にやろうと思えばできる曲なんだ,と大発見(もしかしたら最近はこうした演奏も多いのかもしれない)。みんなで絶叫する従来の演奏は一体なんなのか。もっとも歌詞の内容からすると,作曲者自身は絶叫を望んでいたのかもしれないが。年末のお祭りにはふさわしくない上品な第九です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

オイストラフのウィーン・ライブ(モーツァルト,ショスタコーヴィチ)

Orfeor736081モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番 ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番
オイストラフ(vn) ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィル
ORFEO DOR ORFEOR736081

21世紀にもなってこんなものが見つかるのだから,何とも不思議なもの。1956年のムラヴィンスキー・ウィーン公演のライブ。

まずは,モーツァルト。実は私は,ムラヴィンスキーのモーツァルトを偏愛しているのだが,はっきり言ってまともな録音状態のものが少ないので,こうした協奏曲の伴奏も貴重。きちんとしたテンポ感を刻みながら,きびきびと音量や表情を出し入れしていく様はムラヴィンスキー・マジックとしか言いようがない。オイストラフの輝かしい音色は,言わずもがな。最上級のモーツァルト。

そしてショスタコーヴィチ。これについては,同年の同じコンビのメロディア・スタジオ盤が語りつくされている感があって,今回の演奏もほぼ同じ内容(ライブだけあって,カデンツァなどは一回り熱いし,フィナーレは恐ろしく速い)で,最強の演奏であることは言うまでもない。録音の鮮明さはこちらの方が上で,オイストラフの音色の豊かさを堪能できるが,メロディア盤に比べて暖かめな音とソロのクローズアップが少し過度に感じられる点で,好みが分かれるか。メロディア盤の音割れまでが愛しいほど刷り込まれてしまっている私のような人種にとっては,断然メロディア盤を取りたいが,これは参考にしてはいけない意見。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

ボッケリーニ五重奏団のボッケリーニ

Enycd9703ボッケリーニ 弦楽五重奏曲ヘ長調op.20 no.3 ニ長調op37 no.2 ニ長調op.50 no.2「ファンダンゴ」 小五重奏曲op.30 no.6「マドリッドの夜の音楽」 メヌエット(五重奏曲op.13 no.5より)
ボッケリーニ五重奏団
ENSAYO ENY-CD-9703

時々利用させていただくアリアCDさんが強力にお勧めしていたので購入したもの。

何よりも生気に溢れたボッケリーニ。ワシャワシャと会話をしているような5つの楽器の対話。演奏者についてはよく分からない。現代楽器による演奏で,野太く力強い音色で,思うがままに演奏している感じだが,地に足がついており,常にこの編成(vn2,va,vc2)で演奏しているためだろう,響きが充実しており安心して聴けるし,何かこちらが元気をもらうような感じすら受ける。特に,パストラル楽章の実に幸せな気分。普通の(?)弦楽五重奏曲2曲に,「ファンダンゴ」と「マドリッドの夜の音楽」に,いわゆる「ボッケリーニのメヌエット」を加えた選曲も良く,ボッケリーニを聴くならまずこれ,とお勧めしたくなる1枚だ。

| | Comments (58) | TrackBack (0)

モーツァルト「最後の協奏曲」

Hmc901980モーツァルト ピアノ協奏曲第27番 クラリネット協奏曲
シュタイアー(フォルテピアノ) コッポラ(Cl) ゴルツ指揮 フライブルク・バロック・オーケストラ
harmonia mundi HMC901980

ハルモニア・ムンディが安くなっていたので面白そうなものを何枚かまとめ買い。まずは,フライブルク・バロック管のモーツァルト・シリーズより。

「最後のコンチェルト」と題されたアルバムで,最晩年の傑作協奏曲2曲が収められている。ピアノ協奏曲は,シュタイアーのフォルテピアノによる演奏。フォルテピアノとオーケストラのバランスがとてもよくて気持ちいい。オーケストラも,ソロの部分では弦楽を1人ずつにするなど,工夫を凝らしているようだ。それから,シュタイアーの表現力の多彩なことには驚かされる。乾いた音から豊かな響きをもった音まで,自在に音色と響きを操っている。単なるピアノの前身ではなく,これも完成された楽器だったのだ。

コッポラによるクラリネット協奏曲は,CDの表示は,クラリネット・ダモールとなっているが,初演者シュタートラーの用いていたバセット・クラリネットのことだろう(1794年のリガのプログラムの図版の楽器のコピーとある)。柔らかい音色の中高音域と,力強い音色の低音域,もしかするとこの音色の差がこの楽器の欠点だったのかもしれないが,ここではこれをうまく生かしている。2楽章のロマン派風の美しい表現は面白い。

フライブルク・バロック管は,いつも高水準で何よりも楽しい音楽を聞かせてくれる。ここでも期待を裏切られることはない。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

シフのハイドン

Denon_coco70926ハイドン ピアノ・ソナタ第48番 第20番 第50番
シフ(p)
DENON COCO-70926

これも先日東京駅で買った1枚。若き日のアンドラーシュ・シフの録音。

1978年の録音というから,この時シフは25歳。ハンガリーの三羽鳥などといわれもてはやされていたらしいが、その頃の録音ということか。演奏は,まあ予想通りと言うべきか,いかにも「優等生的」な演奏。ピアノを小さい頃から習っている人にとって,ハイドンはこんなイメージなんだろうな(私の勝手な想像ですが),というのを完璧に具現化したような演奏。消え入るようなピアニッシモを効果的に用いた緩徐楽章の表情など悪くはないが,古楽器奏者達による探求心に溢れる演奏の方が標準になっている現在からしてみると,ちょっと安全運転に過ぎるか。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧